板東浩二 氏 (株)NTTぷらら


どのように許諾を得たのですか。

板東:先方から、①クローズドネットワークでの提供、②クローズド端末限定、③クローズドなお客様限定、という3つの条件を提示されました。もともと我々は、NTT東日本・西日本のクローズドネットワークでの会員制サービスを考えていたので、「クローズド端末に限定すること」だけが課題でした。そこで、専用のSTB(セットトップボックス)をテレビに接続する方式を採用しました。許諾を得てからも、ハリウッドから担当者が3人で来日して、「マスターテープの管理はどこで誰がやるのか」「管理担当者を呼べ」などと言われ、相当猜疑的な目を向けられました。いまでは当たり前のようにOTTでたくさんのハリウッド映画が配信されていますから、時代が大きく変わったなあと実感します。

その後、「4th MEDIA」を含むNTTグループの映像配信3サービス(※2)が統合して、「ひかりTV」が誕生しますが、この経緯について教えてください。

板東:NTTがNGN(次世代ネットワーク)の商用サービスを08年3月から開始すると発表して、グループ全体で映像サービスを大々的に訴求していくことになったのです。「グループ内の3つの映像サービス統合」「NGNでしか提供できないサービスの提供」、という2つの方針が決定しました。NGNでしか提供できないサービスとは何か。思いついたのが、「地デジのIP再放送」です。当時、ISP事業売上高の約半分を占める金額を地デジIP再放送設備のために投資しました。売上も利益も見込めない事業でしたが、NTTグループとしてNGNを成功させるためには避けては通れませんでした。
(※2)当時NTTグループでは、「4th MEDIA」「オンデマンドTV」「OCNシアター」という3つのサービスが存在した。

3サービスの統合は御社が主導したのですか。

板東:協議を重ねた結果、当社が主導することになりました。統合後のサービス名は、「ひかりTV」に決定し、サービス開始前に社名を「ぷららネットワークス」から「NTTぷらら」に変更しました。
3サービスには、それぞれプラットフォームがあってSTBもバラバラ。しかも与えられた時間はごくわずか。統合作業は至難の業でした。「ひかりTV」用のプラットフォームとSTBは新たに開発し、同時に既存のSTBをバージョンアップするアプリを開発して、「ひかりTV」のプラットフォームに接続できるようにしました。しかし、どうしても対応できないSTBが5万台ほどあって、それらは全て交換しました。08年3月31日、無事に「ひかりTV」のサービスを開始することができましたが、死ぬほどの苦労でした。今思い返しても寒気がするほど(笑)。

会員獲得のためには、どのような施策を講じたのですか。

板東:VODでは「5,000本が見放題」という、当時としては画期的なプランを設定しました。これで一気に、映像配信のマーケットが広がったと思います。サービス開始前に立てた目標の第1ステップは、「100万人の会員を集めること」、第2ステップは、「VODマーケットを創出すること」でした。2010年3月に会員100万人を突破して目標を達成。サービス開始から3年が経過した頃に、黒字化が見えました。2年間で100億円以上の損失を出しましたが、2014年に全て累損を解消し、その頃にはVODの月間視聴回数が2,000万回を超えました。
その後、クラウドゲーム、音楽配信、ショッピングとコンテンツの幅を広げていきました。一方で、スマホユーザーが勢いよく伸びていたので、スマホ向けの映像配信にも取り組みました。