No.228 NFTアートとコロナバブル

2021年5月号掲載

現代アートに流れる巨額マネー

コロナ禍で一般の人は実感ないだろうが、全世界的に“金あまり”なのである。
過去には、こういったバブル時代が何回かあり、いずれも崩壊している。
1992年のバブルの崩壊は、銀行が担保がなくても不動産購入資金を拡大融資し、土地が異常な値上がりをした。それらを食い止めるため金融緩和政策をやめたことで呆気なく崩壊した。
2008年のリーマンショックは、信用力が劣る人への住宅ローン(サブプライム)がたくさんの遅延によって破綻。バブル時のような金融緩和からの資金吸い上げではなく、世界的な信用収縮によって崩壊した。
そして、2021年。今は、コロナバブルと呼ばれている。
新型コロナウイルスの感染拡大により、各国が競うように「緩和マネー」施策をとり、株や暗号資産(仮想通貨)が高騰している。現在のところ、過去のバブル崩壊のような資金の吸い上げが起こる可能性は低く、企業の株価や業績実態に比べて株高である。
このような背景から、現代アートにも大量のマネーが投下されている。先日の「アートフェア東京2021」(2021/03/18・19日)では海外からのコレクターがいないにもかかわらず活況を呈していた。従来の古美術を買っていた層が影を潜め、日本のI T長者たちが資産としての「現代アート」を買い始めたのだ。
フェアの2カ月前。SBIアートオークションが東京・代官山で開催したオークションで、ロッカクアヤコ作品が落札予想価格1,000万~1,500万円に対して、2,600万円(手数料別)で落札された。このようにコロナ禍の不思議な停滞の中で巨額マネーが漂っている。

JPEGデータ5,000枚が75億円

そこへ仮想通貨をベースにしたクリプトアート(NFTアート)が話題になっている。
クリプトアートは、果たしてアート界のイノベーションなんだろうか?(※NFTアート=仮想通貨などにも使われているブロックチェーンの技術を使って、固有の価値を持たせたデジタルアートである。クリプトアートに、所有者情報などを記録したN F T(Non-fungible token=代替不可能な貨幣)というものを紐付けることで、アナログ作品と同様に「一点もの」としての価値を持たせている。しかも、今後この作品が誰に転売されてもすべて履歴はデジタルで残り、書き換えられない。〈SpeedyHPより〉)
2021年3月11日。クリスティーズオークションが、無名のアーティストBEEPLEのクリプトアート作品を生きているアーティストとして三番目の高価格75億円で落札させた。
BEEPLEが、2007年から毎日毎日休まず5,000日間、デジタルアートを書いてTwitterなどで発表し続けたわけだから、作品世界には凄まじいエネルギーが宿っていると思う。
アートの評価軸の中に“手間”というのは存在する。手間が評価、販売価格に反映するということは有りうるのだ。逆に一筆書きでもマーケット評価が高いアーティストもいるが…。
それにしても、単なるJPEGデータ5,000枚が75億円って…。

いつの時代も器が先で中身が後

この高額落札以来、クリプトアートが一気に注目された。既存のアートギャラリーからいえば、縁のなかった仮想通貨の世界にいきなり引っ張りこまれ、恐れと好奇心がないまぜになっている。
仮想通貨に係わるIT業界は、「ついに実態に近いモノを見つけた!」とばかりにアートから音楽、ファッションまであらゆる現実を仮想通貨化させようと目論んでいる。
現状では、落札されたクリプトアートは単なるデジタル履歴が埋め込まれたJPEG画像かMP4映像データにすぎない。所有感もなければDRMもない。有名なアーティストは、その有名のカケラで短期間バブルを楽しめる。また、若いCGアーティストにも早ければ一定期間のプロモーション期間が与えられた。
さて、このクリプトアートという分野が一人前になるにはどうしたらいいのか。我々ギャラリスト/マーケッター/プロデューサーは、考えていかなければならない。
いつの時代もメディア(器)があってコンテンツ(中身)が考えられるものだ。ニューメディアもマルチメディアもブロードバンドも器が先で中身が後だった。


福田 淳 FUKUDA ATSUSHI
ブランド・コンサルタント
http://tabloid-007.com @fukudadesuga

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