No.227 東北新社で問題化した放送局の外資規制について

2021年4月号掲載

権力を監視するメディアが権力者の赴くままに…

わたしは25歳のとき東北新社に勤めていた。
1989年4月に「衛星放送関連事業部」ができ、最初のスタッフとなった。
創業者の植村伴次郎さんは「わたしはプロダクションのオヤジで終わりたくない。テレビ局を持ちたいんだ」という信念のもと、このプロジェクトは始まった。
外資規制については、かつてルパード・マードック率いるニューズコーポレーションとソフトバンクによる「テレビ朝日」買収の出来事が大きくクローズアップされたことがある。その際に自国メディアの防衛のために、この放送局の外資規制が話題になった。結局、海外事業者による日本メディアの経営は幻に終わった。
そもそも、どうして外資規制が必要だったかと言うと、放送メディアの中立性、不偏不党という公平性を担保するために必要な措置と定めたからだ。周波数というものは、有限な公共財であり、国が再配分の権利を持っている。しかし、前政権から続く公共放送への政治圧力や、民放の数々の偏向報道をみるに、自国資本で経営を縛ることが必ずしもフェアな運営になっていないのではないかと疑問を抱かざるを得ない。
1957年に田中角栄が37歳で郵政大臣(現在の総務大臣)に就任するや、集票マシーンとして、全国の新聞社を組織化し、テレビ局を作らせ大量免許を交付し利権化させた。これが日本の民放の成り立ちである。日本には事実上ローカル局が存在せず、全国津々浦々までネットワークテレビ局がはりめぐらされている。全ての放送番組中、ローカル局が手掛ける自社制作番組が全体の2割ほどしかないのはそのためだ。
このような状況で護送船団方式の忖度が続いてきた。テレビメディアは第四の権力として政治を監視する立場であるにもかかわらず、テレビ局の幹部は時の首相と会食やゴルフを繰り返し、逆に権力者の赴くままになっていることも散見される。

情報の真贋は視聴者に委ねられる社会

今回、放送行政が始まって以来初めて、東北新社の子会社である(株)東北新社メディアサービスの「ザ・シネマ4K」のテレビ免許が取り消しになるという(加入者がたった700人って悲しすぎて利権といえない…。※衛星放送の事業認定の取り消しは2例目)。過去には、ダイエーの経営不振によりUHF局「京都テレビ」が免許取り消しを噂されたが、そうならなかった。
外資規制に話を戻す。東北新社も民放各社も上場企業である。株を公開しているということは、世界中誰が株を保有してもいいわけで、ときにこの規制以上の株式状態にある。その都度、超過分の議決権をなくすようなことで凌いでいるわけだが、普通の企業であるソニーでも50%超えていたり、ソフトバンクでも30%程度の外資比率である。会社経営の公平性(フェアネス)を保つのに、自国株式がメジャーでなければならない、という訳ではないと思う。
21世紀になり、インターネット革命で、放送免許などなくともテレビ配信ができるようになった。日本の視聴者はほぼ外資が経営しているYouTube(Google社)とNetflixを楽しんでいる。もはや日本のテレビメディアは、情報の重要なリソースとして保護しなければいけない存在ではない。情報の真贋は視聴者本人に委ねられる社会になっているのだ。
そんな時代に、今回の出来事は放送事業者への外資規制の見直しを考えるきっかけにすべきであって、大昔に決まったルールから外れたから罰する、というのは無意味なことである。
古巣への愛からの助言。東北新社は、つまらない接待費を使わないで、すべての放送のインターネット化を推進すべきだと思う。


福田 淳 FUKUDA ATSUSHI
ブランド・コンサルタント
http://tabloid-007.com @fukudadesuga

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