No.222 タレント2.0の時代─タレントのDX(後編)

2020年11月号掲載

前編では、芸能人の収入構造を主要国と比較してきたが、これからの日本の芸能がどうなっていくのか考えてみた。

近年ではテレビ局と芸能事務所という閉じた世界で行われてきた商慣行によって、テレビ局の編成の自由度が下がるとともに、インターネットメディアの勃興で視聴率も低下傾向にある。80年代のテレビ全盛期に40代前後の芸能事務所経営者は、2020年の現在、高年齢化により時代の感性についていけなくなっているのだろうか。かつてはニューメディアだったテレビが、ネットなど新しいメディアへ転換が遅れたことは歴史の皮肉といえよう。
過去、40年間のテレビジャンル分析によれば、報道、スポーツの割合が増加しているのに対して、ドラマのシェアは減少している。そこへ新型コロナウイルスが到来。テレビは新作を制作できず、ネットやアジア、ハリウッドへのグローバル対応もできなかった日本の芸能界は瀕死の状態にある。韓国のJYPエンターテインメントなどが、芸能に近代的かつグローバルな戦略で大成功を収めていることは、大いに参考にすべきと思う。

◆参考
・JYP 2.0
https://youtu.be/08257W8sdNs

これからの芸能界はどうなる?

近年、大手芸能事務所からたくさんのタレントが退所した。ネットメディアの盛り上がりとテレビ不況によるドラマ出演機会の激減と、不条理な経済条件が重なり、タレントは次々と独立している。
しかし、タレントが独立しても、営業も会計も弁護士料も付き人代も自分が社長となって運営しなければならず、当たり前だが経営センスのない人が殆どなので、その道のりは険しい。また、2019年多数の芸人がYouTuberとなったが、デジタル・リテラシーのない芸人にとって、それで生きていけるほど甘い世界ではなかった。中田敦彦さんや西野亮廣さんのようにきちんとセルフブランディングができ、一定の投資意欲がある人は、チームを組成してYouTubeやサロンビジネスで成功している。しかし、全般的には、テレビでそこそこ有名な芸人でさえ、そのへんのYouTuberに勝てない。

◆参考
・「芸能界・20世紀レジーム」の終焉(松谷創一郎)─Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/soichiromatsutani/20200831-00195864/
・小泉今日子さんが望む未来「15歳の私が勇気を出した一歩が、いまの自分につながっている」
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f45fbbac5b697186e2e666e

ここでパラダイムシフトがおきた。
いま流行っているタレント(インフルエンサー=KOL)は、事務所に所属さえしていない。理由は「自分の表現したいことができないから」。従来の俳優は「人の表現したいことを演じる」だけだったのが、“自分”をもっとださないと、今は仕事に結びつかないようになった。そして、自身の魅力をデジタル上で表現できないと、クライアントは見向きもしてくれない。だから、YouTube、TikTokやInstagramが活性化した。
CM単価3,000万円クラスのある有名女優は、Instagram1回500万円で、4回セット2,000万円で広告販売している。P&Gやボルヴィックのような大手クライアントもついている。ヒカキンと同レベルのギャラである。
また、テレビメディア中心の時代は、いかに資生堂やトヨタなど大手クライアントから気に入られるかが勝負だったが、ネットメディア時代には、1クールは3,000万円出せなくても、成果に応じたアドテクとの組み合わせで、パフォーマーもクライアントも納得できるスキームが成立しつつある。

◆参考
・先日聞いた話だと「ヘラヘラ三銃士」などは、クライアントが仕事を依頼しても半年以上の待ちという。
https://www.youtube.com/channel/UCI0xPNkgivKFCcaCYDC8Yg
・「たなかです」は焼き芋を売るというフレームから関連したコマースを立ち上げ商品は即完売。
https://tanakadesu.theshop.jp/items/28395166
・「げんじ/Genji」はスマホの“ジャパネットたかた”と言われるほどの人気!
https://www.youtube.com/channel/UCXrp0H7BPBHx2YTYMiiKEAA

フォロワー30万人程度のタレント(インフルエンサー)でも、年に3,000~5,000万円の稼ぎを得ている。タレントの働き方改革である。クライアントもメディアも含め、大きな企業だけで社会は成立しなくなった。小規模でも社会のニーズを的確にとらえ、潤いを与えることができるなら、それはそれで成立する新しい社会ができつつあるのだろう。さらに中国はもっとえぐい。もはや広告代理店がない。タレント(KOL)が直接大手ブランドと契約する。

◆参考
ジェシカ・アルバが2011年に創業した家庭用品のブランド「The Honest Company」は、今や時価総額10億ドル(約1,000億円)。
https://forbesjapan.com/articles/detail/7190

まとめ

タレントのDXに必要なことは下記の3つ。

・セルフブランディングをしていく
自分の特徴を再定義する。やりたいこと、社会的な存在としての自分を意識すること。その上で、キャリアパスに戦略を持つ。きちんとした公式Webサイトをつくり、商品としての自分が守るべきブランドテイストを決め、SNSで発信し、できるだけたくさんのフォロワーを得る努力をする。
・新しいメディアは駆使してマーケットを広げる
メディアがデジタルにより大きく変換する中で、新しいチャレンジをすること。また、日本だけでなく、アジア、特に中国と韓国に重きを置く。ハリウッドは中国経由が近道。
・自分のファンコミュニティをつくる
ファンを大切にし、ネットを基盤としたコミュニティをつくることで、自分のメディア(オウンドメディア)を築くことができる。既存メディアや事務所に頼らない収益構造を考える。


福田 淳 FUKUDA ATSUSHI
ブランド・コンサルタント
http://tabloid-007.com @fukudadesuga

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