No.210 同調圧力の成れの果て

2019年11月号掲載

先日、超大型台風が日本に到来し、大変な被害をもたらした。亡くなられた方、被災され今も苦労している方々にお見舞い申し上げます。

日本が不幸なんだからあなたが幸せなんて許せない

さて、今回のコラムは台風のことではなく、台風が来ることによって作り出されたマスコミ空間について述べたい。
もちろん、大型台風の到来について周知徹底するためマスメディアが活用されるのは当たり前だが、SNSなどで必要以上に煽られた括弧付きの“台風”報道については辟易した。
私は、台風のときに日本にいなかった。ラオスに行っていたのだが、それらの素晴らしい自然の投稿に対して、「不謹慎だ!」という意見が舞い込んできた。正直、驚いたというより呆れた。
SNSは、日本に限らず世界的な規模で展開するメディアである。ロンドンのパブでビールを飲んでいる投稿もあれば、アフリカの草原を走っている投稿もあるだろう。それらも不謹慎なのか? つまり、想像の範囲がたった日本に過ぎないというのが問題なのではなく、日本がこんなに不幸なのだから、あなたが幸せなんて許せない、という近年よくある同調圧力にあるのだ。

報道が日本人をルサンチマンにしている

小田健さんが書いた「AERA」の記事「“他人の得が許せない”人々が増加中 心に潜む「苦しみ」を読み解く。」が興味深かった。
定食チェーンの「やよい軒」が、無料だったご飯のおかわりを試験的に有料にした。というのも、おかわりをしない客から「不公平だ」という指摘があったからだという。自分が一切損しないのに、他人だけが幸せだと怒り出す人たちがいるのだという。こういった観念は、心理カウンセラーの大嶋信頼さんによれば、「ルサンチマン」というらしい。ルサンチマンとは強者に対する弱者のねたみや恨みをさす。
私は根底にあるのは、エリート教育の不在だと考えている。日本語のエリートという言葉は選ばれた者というふうに考えられがちだが、語源であるフランスでの実際の意味は、“一生懸命人類の知を勉強、習得し社会を動かすようなリーダーになること”なのだ。エリートは決して本音を言わない。理想を実現するため必死で人々を説得できるのがエリートなのである。
マクロン大統領がフランスの田舎でタウンミーティングをしているYouTubeを見た。7時間ぶっ通しで国民からの質問に答え説明していた。凄い体力と知力である。これがエリートのあるべき姿なのである。愚痴らない、ぶっちゃけた本音を言わない。それを言うと、理想的な社会が実現できなくなるからだ。そういう涙ぐましい努力によって、人類は正しい方向に進んできたと思う。

なので、台風の翌日の日本の政治家が「今回の台風被害はまずまずに収まった」と失言し、発言撤回したのは記憶に新しい。だからぁ、本音を言うなってば。リーダーはいつだって知的でなくてはいけないのだ。
マスコミも気の毒だとは思うが、台風被害の報道ばかりしていないでこの原因がグローバルウォーミングにあるかないかくらいの報道姿勢で挑んではどうなのかと思う。
ちなみに、エアコンがないフランスの2003年夏の猛暑では老人1.5万人が亡くなったが、報道はベタ記事のみだった。痛ましいが報道価値はないからだ。日本の情緒に偏り過ぎた報道が日本人をルサンチマンにしていることは間違いないだろう。


福田 淳 FUKUDA ATSUSHI
ブランド・コンサルタント
http://tabloid-007.com @fukudadesuga

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