No.198 クールジャパンがちっともクールじゃない訳

2018年11月号掲載

日本の現代アートは世界でちっとも知られていない

以前、安倍首相がオバマ大統領(当時)にワシントンで会った際、オバマ大統領が「(日本の生み出したものは)空手、カラオケ、漫画、アニメ、絵文字」と発言した。これらは、すべてジャパンメイドでグローバルスタンダードになったものだ。これに「ラーメン」を加えたらバッチリなのではないか。しかし残念ながら、日本の現代アートは、ちっとも世界で知られておらず、また市場規模もないに等しい。現代アートマーケットとは、クリスティーズの競売のニュースなどで知るしかないとお思いの方もいるだろうが、基本的には二段構造で成り立っている。近所のギャラリーのことを一次マーケット“プライマリーギャラリー”というもので、基本的にはまだ一般に認知されていない作家のものが多い。またピカソやアンディ・ウォーホルの作品が何百億で売買されるクリスティーズなどは、二次マーケット“セカンダリーマーケット”といい、すでにアートとしての評価が定まっており、かつ投機対象としても安定したアート作品の売買の場として存在する。ちなみに、アートの世界市場は、2014年には約7兆600億円となっている。売上はオークションとギャラリーからなり、その売り上げは半々である(欧州美術財団TEFAF「Art Market Report 2015」)。

現代アートのコンテクストをしっかり読むのが成功のカギ

同年の世界の美術品市場シェアを見てみると米国が38.8%とトップ、続いて中国が22.4%、英国の21.9%となっている。日本は0.7%と上位3カ国との差は大きい。他国に比べ富裕層の割合が多い日本だが、ちっともアートを買わない民族だといえる。では、国の支援はどうなっているのか。文化予算額についてはフランスが約4,000億円、韓国が約2,500億円あるのに対し、日本は約1,000億円。他国と比べて、圧倒的に支援が少ない。また、聞いた話では、「アートフェア東京」での現代アートと日本画などの古典との販売比率は20:80。日本の現代アートで世界に認められているのは、村上隆とチームラボくらいではないか。偶然にも両者を海外で扱うのは、ガゴシアンという世界のトップクラスのギャラリーである。彼らの手腕が優れているのはもちろんのことだが、両者の成功の秘訣は、現代アートのコンテクスト(文脈)をしっかり読んでいることだ。アートは、アートだけで成り立たない。構図が素晴らしい、圧がある、という要素以外に、作品にまつわるコンテクストがきっちり考えられていることが大事なのである。作品のコンセプト、投資価値など作品を成立させる言葉をちゃんと持っているかが問われる。作品と社会を結ぶ接点がきっちり説明できることで世界観が生まれる。そのコンテクストが東洋の文脈(貧を良しとする)ではなく、きちんと西洋の文脈にはめることなのだ。

ローカリゼーションとグローバリゼーション

さて、この稀有な成功例からみるに、実は日本人にとっての現代アートは、現代アートではないのではないかと感じることがある。つまり、日本人にとっての現代アートは、コミックでありアニメなのではないか。半世紀以上も500ページ近くあるコミック雑誌が何十冊も発売される国。そんな国は日本しかない。しかもコミックは、「あしたのジョー」や「はだしのゲン」のように単なる子どものおやつではなく、ちゃんと社会との接点を描いている。つまり、クールジャパンと呼ばれるジャンルの世界的な成功のカギは、コミックのローカリゼーション、コミックアーティストのグローバリゼーションの必要性だと思う。


福田 淳 FUKUDA ATSUSHI
ブランド・コンサルタント
http://tabloid-007.com @fukudadesuga

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