No.194 ソーシャル格付けの時代

2018年7月号掲載

中国政府の“信頼できないリスト”作り

動画配信サービス「Netflix」で近未来の社会生活を皮肉っぽく描いたSFオムニバスドラマ『ブラック・ミラー』(シーズン3第1話「ランク社会」)の中で、各個人がSNSを通じてポイントを付けられ、そのポイントに基づいて社会での立ち位置が決まる世界が描かれている。これは、現在のSNSの「いいね!」などソーシャルメディアでの評価を戯画化したもので、人からの評価が多い暮らしをしていると、頭の上に点数がでる。その点数によって、入れない施設があったり、人付き合いの評価にも直結する社会になっている。でも、実はこのドラマを笑っていられない事態が生じている。先日、あるジャーナリストが政権批判の記事を書いたところ、自分の娘が有名高校に進学できなくなったり、海外渡航のビザが発給されなくなったのだ。こんなウソのようなホントの話がまかり通るのが「中国」なのである。中国のジャーナリスト劉虎(リウ・フー)は、2016年に公務員の腐敗を訴える記事を書いたことで、政府から罰金の支払いと謝罪を求められ、劉虎は、それに従った。その後、広州行の航空券を買おうとした時に搭乗を拒否され、そこで初めて自分が“信頼できないリスト”に載っていることを知った。中国政府の建前は社会に、“「良いこと」をしたらソーシャルポイント(社会格付け)が上がる”、という趣旨で14億人のデータを自在に吸い上げているのだ。中国政府は2014年に初めてこの「社会信用システム」を採用。「長々とゲームをするのは怠け者、献血をするのは模範的市民など、格付けの高い者を優遇し、低い者を罰するシステムなのである。14億人の国民の行動を監視し、ランク付けし、スコアが高いものに恩恵を、低いものに罰を与えると発表した。この制度は2020年までに、中国人すべてに適用されることになっている。習近平国家主席いわく、「信用できる人はどこへでも行くことができ、信用できない人は一歩を踏み出すことすらできないようにする」という。

権力に逆用されない世界的なルールつくりが必要

日本では個人情報保護の名のもと個人のビッグデータが得にくく、AI時代に遅れをとっているが、中国の人権蹂躙ともいえる「人をソーシャル性によって格付けする」という新たな試みは、政府を強くすることはあっても、人々の暮らしを本当に良くするのかは疑問である。良いことは、お上(政府)から強制されるものではなく、社会の内側からの合意形成によって行われるべきであって、数値や賞罰で正していくことではないと考える。さりとて…、現在のソーシャルメデイア全盛の時代にあっては、日本でも無名性をいいことに、SNSで人を攻撃し、果てには自死にまで追い込まれる事案も多発している。ソーシャルメディアは個人が権力に対抗できるほど巨大メディアに成長した反面、それを権力に逆用されてしまわないような世界的なルールをつくるべきである。


福田 淳 FUKUDA ATSUSHI
ブランド・コンサルタント
http://tabloid-007.com @fukudadesuga

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