No.193 起業国家エストニアへ行ってきた

2018年6月号掲載

オフィス設立のための旅

今回、スタートアップイベント「ラティトュード59」に参加するため初めてエストニアを訪れた。「ラティトュード59」は、エストニアが主導するスタートアップを目指すビジネスマンのカンファレンスなのである。
https://latitude59.ee/
東京からの直行便はなく、フィンランドの首都ヘルシンキからのトランジットとなる。首都タリンには、そんなに先進性を感じられるところは少ない。ホテルもタクシーもヘルシンキに比べたら愛想はない。どちらかというと、旧ソビエトを引きずった古びた感じさえする。ついでにいうと、国家がミシュランを認めてないから星レストランはなし!
今回は、イベント参加と仮想通貨を取り扱うオフィスを作るための旅である。わたしの新規事業は、ブロックチェーンを活用し、地球環境を救うNPOの支援を目的とする企画会社である。条件が満たされたNPOにトークンを発行する。詳しくはまたの機会に説明したいと思う。さて、健康志向で柔和な人たちのいるヘルシンキから、小型飛行機でわずか30分のところにあるタリンの街がなぜこんな世界中から注目されているか、この目でしかと確認してきた。

分散国家のロールモデル

まずは、一番の起業家が国家というユニークさ。誰でも自分のビジネスを世界展開しようと思ったら、法人登記制度「e-residency」を活用するだけでできる。私も構想数週間、設立まで2週間というスピードでオフィス、銀行口座の開設までこぎつけた。日本だと数カ月かかるだろう。
https://e-resident.gov.ee/
エストニアは、不動産売買、結婚・離婚以外の公文書がすべて電子化しており、イギリスの公文書の3%しかない。また、国民のDNA情報を解析し、医療費の削減を目指している。
https://goo.gl/H5GRa5
働き方改革の決定打「デジタル・ノマド・ビザ」構想は、エストニアに365日滞在可能で、かつ9 0日間E U旅行ビザ付き。(2019年施行予定)
https://bit-traveler.com/expat/76
教育面においても「子どもが楽しめない教育方法の根絶」を目指しており、e-educationのスタートアップを数多く支援している。孫泰蔵さんは「V I V I T A(ヴィヴィータ)」をタリン市内に開設する。これは先生がテキストを使って教えるのではなく、メンターやファシリテイターが子どもたちに自由な発想でモノづくりを行える環境を提供するものである。
https://vivita.co/
また会期中の5月25日に、GDPR(欧州統一個人情報保護法、EU GeneralData Protection Regulation)が施行開始となり、会社の所在地にかかわらず、EU域内からの個人情報の取得にあたり必要な対策を怠った場合は、その会社の売上の4%か、2,000万ユーロかの高い方を上限額とする制裁金が課される。新しいセキュリティに対するスタートアップも数多くみられた。昨今問題になっているFacebookの個人情報を悪用した世論操作など過去のものになるだろう。
https://wired.jp/2018/05/29/gdpr-will-change-the-web-and-more/
これらの新しいサービスを国家が後押しするために、e-residency上でスマート・コントラクトがサポートされ、決済の仕組みとして「Estcoin」(エストコイン)が活用できる。これはエストニアが自ら仮想通貨を発行し実装するものである。中央集権から分散型国家のロールモデルとなっている。歴史的に見てもロシアに対する脅威から、国民データを他国に分散させており、エストニアのもつ歴史が、発想を前向きにしているのだと思う。
https://estcoin.ee/
以上、エストニアのダイナミズムが少しでも伝わったら嬉しい。


福田 淳 FUKUDA ATSUSHI
ブランド・コンサルタント
http://tabloid-007.com @fukudadesuga

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